ウォーキング vs ランニング:速度と動きの違いをアニメーションで解説!
前回の記事では、速いウォーキングよりも遅いランニングの方が楽という領域があることを示しました。しかし、グラフと数字だけでは感覚的にわからないと思います。私自身も、グラフと数字が意味していることは一体どんな感じなのかはわかっていません。
そこで、アニメーションを作ってみました。スイッチング領域の前後において、つまり、ウォーキングとランニングにはどのような違いがあるのかをアニメーションでつかみ取っていただきたいと思います。
- ウォーキングとランニングの動きの違いをアニメーションで表現した。
- 予想した通り、スイッチング領域(2.9 m/sから3.0 m/s)の前後で動作が大きく変化した。
- それ以前は接地時間が長く、上下動が少ない、ウォーキングであった。それ以降は、身体重心の上下動が大きくなり、滞空時間の長い、ランニングとなった。
速度別アニメーション
アニメーションと言っても、頭と身体重心と両足の接地点の動きを表したものに過ぎません。ここまで重力ランニングの理論において議論されているのは、身体重心と両脚の重心と接地点の動きだけです。ランナーの骨格は未だ定義されていませんので、皆さんの頭の中で補っていただくしかありません。紫色の四角形が身体重心です。黄色の円と赤の円は接地点を意味していますが、厳密には、円の最下点が接地点の座標になります。これらの円は接地したときには緑色に変化します。地面に近くても緑色になっていないときには接地していませんので、その辺りも注視して、感覚的なところを想像してみてください。
頭は青色の縦長の楕円形です。身長が170cmになるように座標を設定しています。身体重心に対して、スイッチング領域よりも低速においては、直上に位置しています。スイッチング領域よりも高速においては、離地する瞬間の傾きθ2の半分の角度で前方に傾いていることにしました。また、以前にアニメーションを作成したとき、背景は白でしたが、今回は速度や上下動が比較しやすいように背景にグリッドを加えました。
スイッチング領域よりも低速
1.5 m/s
まずは、普通のウォーキングを見てみましょう。足が接地してから、次の足を離しているように見えます。身体重心の上下動がほとんどないので、歌舞伎役者のように見えます。
2.0 m/s
次に早歩きです。足の乗り換えのときにわずかに身体重心の上下動が感知されます。しかし、上下動はほぼないと言って良いでしょう。ストライドとピッチが増加することにより速度が増加していますが、やはり、足が接地してから、次の足を離地しているように見えるのは変わりません。
2.9 m/s
スイッチング領域直前の速いウォーキングです。ウォーキングとランニングの中間と言った方が良いでしょう。2.0 m/sのときと比較して、ストライドが小さくなり、ピッチが増加しています。脚の切り替え時に滞空時間があることを明らかになっています。
スイッチング領域よりも高速
3.0 m/s
スイッチング領域直後の遅いランニングです。明らかに動きが2.9 m/sのときと変わります。速度は5%弱しか変わっていません。身体重心の上下動が大きくなり、細かく脚を動かしているランニングになります。前進の速度に対して、脚の切り返しが多くて、非効率に感じます。
3.5 m/s
ストライドが少し広がりました。低速ですが、脚を細かく切り替えて走っている、という印象です。
4.0 m/s
ストライドが広がり、安定したランニングに見えます。
5.0 m/s
伸びやかさと力強さのある、調和のとれたランニングです。身体重心よりも明らかに前方に接地点が移動しますが、着地するまでに引き戻されて、着地の瞬間には身体重心の直下に位置しています。色の変化が無ければ、身体重心よりも前方に着地しているように見えることでしょう。
まとめ
予想した通り、スイッチング領域の前後で印象が大きく変わりました。それ以前は接地時間が長く、上下動が少ないウォーキングであることが明らかに示されました。一方、それ以降の高速領域では、身体重心の上下動が大きくなりました。スイッチング領域の直後は足が異常に細かく動いていて窮屈な印象です。3.5 m/s以降が通常見られるランニングの状況ではなかろうかと思います。後は、速度が増加するに従い、当然のことながら、力強さを感じるようになりました。これは、速度の増加に伴い、身体重心が低下して、接地点と身体重心の距離が大きく変化するためです。着地の際に、身体重心と接地点の距離が短くなっており、脚を後方に送るに従い、距離が大きくなっていくという一連の距離の変化がはっきりと見て取れるようになります。
※本記事においてはスイッチング領域は2.9 m/sと3.0m/sの間を指しています。しかし、シミュレーションに用いる数字によって、スイッチング領域となる速度は変化します。ゆえに、現実の世界において、スイッチング領域の存在を予言する結果ではありますが、定量的に2.9 m/sと3.0 m/sの間に存在することを意味しているわけではありません。