伸びやかに見えて遅くなる?ストライド最大化の落とし穴
前回の記事では、シミュレーションの方針を改め、ストライドの最大化を行うとどうなるかを計算してみました。
今回は、その計算結果をアニメーションで確認してみようと思います。
重力ランニング
まず、5.0 m/sの重力ランニングです。1キロを3分20秒で走るペースで、これは1 km当たりの仕事を最小化した結果です。リアルタイムと0.25倍速の動画を掲載します。
リアルタイム
0.25倍速
ストライド最大化
次に、5.0 m/sのストライド最大化です。重力ランニングと比較すると、まず明らかなのはピッチの減少であり、それに伴ってストライドが大きくなっています。お題目の通り、ストライドの最大化、すなわちストライド走法になっていることがわかります。ただし、着地は重心のほぼ直下であるため、アニメーションで見ても無駄があるようには感じません。むしろ、大きく伸びやかな走りです。
リアルタイム
0.25倍速
両者の比較
ただ、いつもの指摘になりますが、ストライド最大化のアニメーションだけを見ていても、何が課題なのかはわかりません。そこで、重力ランニングと重ね合わせた動画(0.25倍速)を作成しました。ストライド最大化はモノクロ、重力ランニングはカラーです。重ねてみることで明らかになるのは、重力ランニングの方が平均速度が大きいという事実です。この動画はリアルタイムの5秒間を表現したものですが、わずか5秒の間でも差が生じてしまっています。
さらに、もう1つ興味深い事実を発見しました。接地点に着目すると、最初の4歩まではストライド最大化の方が遠くの地面に先に接地します。以下の画像は、ストライド最大化の一歩目の接地の瞬間です。当たり前と言えば当たり前で、いくら重力ランニングの方がピッチが大きいとはいえ、初期段階ではおよそ一歩に対して一歩で進むため、一歩が大きい方が遠くの地面に先に届きます。しかし、ストライド最大化の5歩目は、重力ランニングの6歩目とほぼ同時に地面に接地します。こうして、接地する地面の遠さという意味でも完全に勝敗が決します。

これは、例えば3 m離れた地面にあるボールを足先で触る競争があった場合、ストライドが大きい方が有利かもしれないことを意味します。サッカーであれば頻繁に起こる場面です。しかし、これが10 m離れたボールであれば、重力ランニングの方が勝ちます。これもサッカーでは同等の頻度で起こる状況です。つまり、競争の条件に応じて最適な走り方は変わってくるわけです。
ただし、陸上競技では一貫して胴体部分がゴールを通過することが勝利条件であり、話はシンプルです。ゴールまでの距離も最短で100 m、このブログが対象としているのは持久走で、5000 m以上が中心です。したがって、結論としては重力ランニング一択となります。

