寝たままできる!脱力から始めるランニング改善
以下の記事では、立った状態で脱力することを、走りの改善に向けたスタート地点として提案しました。
しかし実際にやってみると、これは非常に難しいタスクだとわかります。
脱力は意識しにくい
そもそも「脱力する」という行為自体、普段あまり意識の対象になりません。走るとなると、多くの人が筋力を使う(スイッチONの)状態を重視します。脚を着く、腕を振るといった動作を意識的にコントロールして走りを改善しようとするのは、ごく自然な発想です。
一方で、走っているときに「脱力できているか」を確認するのは難しく感じます。本来は、余分な力を抜き、必要最低限の出力に抑えるべきですが、走る動作中は絶えず脚を出し、バランスを取り続けなければ転倒してしまいます。だからこそ、瞬間的にでも脱力できているかを確かめるのは至難の業なのです。
立ったままの脱力の難しさ
そこで、立った状態で脱力する練習をスタート地点に設定しました。しかし、実際にやってみると、立っている状態で筋力を緩めるのは不安が伴い、うまくいきません。理論上は、身体の各部が垂直に積みあがっていれば倒れませんが、現実には多くの人が理想的な姿勢を保てていません。そのため、突然全身の力を抜けば、倒れてしまう可能性があります。
さらに、力が入っていること自体が無意識で行われているため、力を抜くという行為には高い集中力が必要となります。特に肩や首周りは慢性的に緊張しているため、それを意識して緩めることすら難しく、多くの人が肩こりに悩まされています。だからこそ、まずは「脱力そのもの」に集中して取り組むべきなのです。
脱力エクササイズ:まずは横になる
横になった状態であれば、全身を完全に脱力しても倒れる心配はありません。うまく脱力できると、心臓の拍動が全身に伝わるような感覚さえ生まれます。脱力の感覚を身につけることで、はじめて「力を入れる」という感覚も正しく認識できるようになります。この脱力感が基準となり、立った状態での脱力練習も可能になります。
人は誰でも眠る時間があります。つまり、場所・時間・体力の問題なく、誰でも取り組めます。ベッドに入ってからの5分間、この脱力エクササイズを行うのは良い習慣になるでしょう。
特別なやり方は不要です。仰向けに寝て、枕の有無も問いません。そこから全身の力を抜いていきます。腕と脚は比較的意識しやすく、重さをすべてベッドに預けるように脱力します。
首と肩の脱力が最大のポイント
ここからが本番です。腕を脱力しても、肩には無意識に力が入っていることがよくあります。胴体が一枚板のように動いている人は、肩関節から先は脱力できても、肩甲骨は固定されてしまいがちです。肩甲骨に繋がる筋肉も含め、すべての力を抜きます。眠っている赤ちゃんのように、肩全体が床にぺたんと張り付くようなイメージで脱力してください。もちろん、筋肉の力で肩甲骨を引き付けるのはNGです。

首は自然なカーブがあるため、完全には床に付きませんが、首の後ろの筋肉が緊張していないかを丁寧に確認します。デスクワークなどで慢性的に緊張している部位なので、寝ていても力が入ったままになっていることがあります。
時間をかけて丁寧に行う
各部位には最低でも10秒以上意識を向けます。脱力したと思った瞬間に気が緩みがちですが、丁寧に観察すれば残る緊張が見つかるものです。表面的に「できた」と判断せず、潜在的な緊張も丁寧に探りましょう。時間をかけることが重要です。
静の重要性
ランニングのトレーニングのはずが、静の極致のような取り組みになります。そのため、落ち着いて取り組むのが苦手な人もいるかもしれません。しかし、運動の達人は「静」と「動」の両方の重要性を理解し、身につけています。筋力のONに意識を向けるのは誰でもできます。OFFを意識できるかどうかが、凡人と達人の分かれ道なのです。
もしこのエクササイズが難しく感じるなら、なおさら実践する価値があります。