脚が長くなったら速く走れる?重心の高さとランニングの関係

接地時間を長くする方法として、重心の高さhを増加させてみます。

  • 重心の高さhを大きくすることで、ピッチが微減した一方で、速度は微増した。
  • 滞空時間が長いため、重心の高さhの影響は、限定的であることが分かった。

重心の高さの増加が意味するもの

重心の高さhが増加するということは、ランナーの背が高くなることだと考えてください。決して背伸びをして走るとか、前かがみの姿勢を伸ばすとか、そういうことではありません。重心を無理に上昇させるのではなく、ありのままでそうなる場合の話です。重心の高さhが増加するということは、脚が長くなるということです。身体の傾きθの範囲が同じであったとしても、脚が長くなればそれだけストライドが伸びます。すると、0.2秒の滞空時間の比率が小さくなります。

重心の高さhを1.00から、1.05m、1.10mに変えてみました。重心の高さが10cm上昇するということは、身長にして20cmくらい高いことになります。身長は170cmで体重が60㎏を想定していましたが、身長190cmで60㎏ですから、BMIが16.6となり、WHOの判定基準で「痩せ」に入りますが、幸い「痩せすぎ」ではありませんでした。現実的にあり得る数字ということで、先に進めます。痩せたので、断面積は変化せず、したがって、走行抵抗の値も変化しないものとしました。

以下が計算の結果です。

身体の傾きθの範囲:0°から25°
滞空時間:0.2 s
重心の高さh/m1.001.051.10
走行距離l/m100100100
歩数727169
経過時間t/s22.822.722.5
ピッチ/[歩/min]202199197
速度V/[min/km]3:303:293:27
水平方向の仕事Wh/J683769807014
垂直方向の仕事Wv/J818380677837
合計の仕事W/J150201504714851
Whの割合/%45.546.447.2

改めて言うと、身体の傾きθの範囲は変わらず0°から25°です。しかし、次の変化が見られました。まず、100mに到達するまでの歩数が減りました。脚が長くなったのであれば、当然に予想されることです。これにより、滞空の回数も減るので、Whが減少します。一方で、水平方向の仕事Wvは微増しました。脚が長くなった分だけ、速度Vが増加したためです。そして、当初の狙い通り、ピッチは微減しました。197歩/minのピッチで、1キロ3分27秒の速度は両方とも現実的な数字です。

重心の高さの変化の割にはランニングへの影響は小さい

ただ、重心の高さhが10%も増えた割には、他の数値の変化が小さいという印象です。単純に考えると、速度が10%増になっても良さそうな気がします。しかし、滞空時間があるため、走行中の1/3にしか貢献しないのです。2/3の時間は空中で自由落下するというだけであるため、その間は、高さhの増加は全く関係ないのです。せっかくの脚の長さを活かせないという意味でも、滞空時間を短くするべきであることがわかりました。滞空時間が短くなれば重心の高さhの影響もよりはっきりと表れてくると予想されます。

接地時間を長くすることで滞空時間の比率を小さくするというアプローチは狙い通りの方向に変化が見られましたが、効果は限定的ということが確認されました。このことから、次は直接的に、滞空時間を短くしてみようと思います。

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