マリオブラザーズを卒業して、マラソン中継へ
これまで、重力ランニングのシミュレーション結果をアニメーションとして表現してきました。いくつものアニメーションを公開してきましたが、いずれも人間が画面の左から右へと駆け抜け、その後マリオブラザーズのように再び左から登場するという構造が繰り返されていました。
この形式は、ランナーが移動していることを伝えるにはわかりやすいものの、走りそのものを観察するには不便でした。マラソン中継のように、画面の中央にランナーを据え、背景が移動する形式の方が、フォームの観察には適しています。
そこで、アニメーションをそのような形式に改造してみました。元データは以下の記事の「滞空走法」で、時間はリアルタイムに設定してあります。
青の楕円は頭、紫の四角形は重心、2つの小さな円は右足と左足を表しています。速度は5.5 m/sで、1キロ3分2秒。世界のトップランナーのマラソンの巡航速度とほぼ同じです。画面中央にランナーが位置しているため、リアルタイムでも走りの様子がよくわかります。個人的には、上下動が意外と大きいと感じましたが、マラソン中継でもよく見られる動きであり、不自然なものではないと思いました。
この走りが、一般的なランナーのフォームとどれほど異なるかについては、以前に考察した通りですが、見た目だけでは走りの効率は判断できないと考えます。見た目が似ていても、ランニングエコノミーが大きく異なることはよくあります。その意味では、このシミュレーションから得られる情報は限られているのかもしれません。特に、リアルタイムの動画を見ても、効率の違いはわからないでしょう。
では、速度を落とせば違いが見えるのでしょうか。1/4倍速にした動画を以下に示します。かなり見やすくなります。まず、着地点が身体の重心直下にあることが確認できます(着地の瞬間に円が緑色になります)。重心の動きが顕著に変わるのは着地の瞬間です。下向きに運動していた重心の運動の向きが上向きに変わっています。そして、着地の瞬間から徐々に重心が持ち上がり、離地の瞬間には非常に滑らかに接地点が地面から離れます。着地の瞬間に最大の力が発揮され、それ以降は重心を必要最低限だけ持ち上げる程度の力しか発揮されないのです。つまり、地面を蹴る動きが全くありません。
このように、スローモーションであっても、解説がなければフォームの理解は難しいという点に、ランニングフォームを伝えることの難しさがあると思います。上記のような動きは、エリートランナーであれば少なからず実践しているものですが、一般ランナーにとっては意識しづらく、意識していても感得しにくい部分です。