ゼロベースランニング―走りの常識を変える!フォームをリセットする!

高岡 尚司 著

出典:https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784408456157

評価

項目スコア
重力ランニングとの親和性★★★★★ 5点
理論の完成度★★★★☆ 4点
読み物としての面白さ★★★★☆ 4点

感想・見解

重力ランニングと同じ考え方をはっきりと打ち出しています。Chi RunningやBorn to Runとも合い通ずる考えです。したがって、まず、読んでいただきたいのですが、一応内容を紹介します。

筆者は、怪我のため、箱根駅伝に出場出来なかったという過去を持ちます。その後、鍼灸師として働く中でBorn to Runに出会います。こうして裸足ランニングを自ら実践するようになります。その結論をまとめたのが本書ですから、重力ランニングと同じ方向を向いているのは当然です。筋肉走りと決別するために必要なポイントを簡潔に抑えてあります。読みやすくわかりやすいと感じます。筆者がモデルとなった写真もありますので、見た目でも理解できます。

第一章では、重力ランニングにおける「筋肉走り」との比較を行います。ランニングに関する誤った5つの常識を否定することで、既成概念を壊していきます。その後、第二章でゼロベースランニングを定義していきます。筋肉走りとは異なる点を解説していきます。言葉と写真での解説が中心です。この辺は、一般的なランニング本で行われている通りです。第三章はゼロベースランニングの概要を理解した人に対する細かいチェックポイントを記載しています。第四章では、具体的なトレーニング方法が書いてあります。目指すものは重力ランニングと同じですから、私の感覚とも一致し、有効な方法であると思いました。

ランニングの本質について、細かく研究されたことが良くわかります。ただし、4スタンスの違いについての理解がないので、その点が問題になる可能性を感じました。私の見立てでは、著者はA2タイプです。胸を反らすのが基本姿勢であり、脚を後方に送る(股関節を伸展する)ときに、股関節の内旋を伴うのが自然です。このことは、A2タイプの人にとっては当たり前過ぎて意識されることはありません。ですが、例えば、A1タイプの人は脚を後方に送るときには、股関節は外旋するのです。第二章「脚は自然についてくる」の項で、脚の内旋・外旋にまで言及していますが、タイプの違いによって身体の動かし方が異なるので注意が必要です。

しかし、逆に言えば、この点にまで詳細に考察がなされている本は初めてです。裸足ランニングを行う中で、足裏の感覚を観察し、脚の自然な動きを追究していることが良くわかります。

「筋肉走り」と「重力ランニング」の対立構造は明確に意識されており、乗り越えるべきものです。これは、ランニングコミュニティにおいて、徐々に共通認識となりつつあります。上記対立構造を明らかにしたところで、安心してしまうのは当然です。何故なら、自分自身の身体では確かに効果があるからです。そうして、善意の元に具体的な指導を開始すると、指導者と4スタンスタイプの異なる人たちには、効果がないどころか、故障の元になるという点が、今もってランニングが原因で故障する人たちが絶えないことの背景ではないでしょうか。

このブログにおいては、重力ランニングの習得には2つ(か、それ以上)の壁があることを理解した上で書き進めて行きます。

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