がんばらないランニング―もっと楽にもっと速く
三津家 貴也 著
出典:https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784046063328
評価
項目 | スコア |
---|---|
重力ランニングとの親和性 | ★★☆☆☆ 2点 |
理論の完成度 | ★★★★☆ 4点 |
読み物としての面白さ | ★★★★☆ 4点 |
感想・見解
三津家さんというイケメンが著者です。読む前は、箱根駅伝で活躍された方なのかなと勝手に思っておりました。実際には、中距離が専門でした。
ランニング本としては、初心者向けです。これからランニングを始めようとする人に対して、ランニングの敷居を下げ、続けやすくする役割を担う本です。著者自身がモデルになった写真がコンテンツのメインですが、華がある方なので、紙面がしっかり成立しています。著者は、筑波大に進学したけれども、大学の4年間では、自己ベストを更新できませんでした。しかし、卒業研究により自分の走りの問題点に気がつきます。その後、大学院のときに記録を伸ばすことができました。つまり、理論の理解から、フォームの改善を行い、パフォーマンスを向上させたのです。
中距離ランナーですから、スピードが求められます。基本概念は地面を強く蹴る高速ランニングにならざるを得ません。本人も書いているように、それが「がんばるランニング」です。彼は今、そこから、力を適度に抜いて走ることを普及させようとしています。それが「がんばらないランニング」です。しかし、ランニングに対する基本概念は変わっていません。地面を蹴って進むと捉えているようで、表紙の写真でも明らかなように、上方へジャンプしています。滞空中に、身体の重心が上昇し、足と地面の間に大きな空間があるのです。筑波大で学んでいますから、同門の弘山勉氏と同じ考え方で、ランニングを理解しています。効率良く、地面を蹴ることを追究しているのです。著者の走りが最もよくわかる動画を以下に示します。さすがに、全国区のランナーです。1kmを3分で走ることを簡単にやっています。
競技者でない、一般人は、がんばるランニングの同一直線上のがんばらないランニングで楽しめば良い、というのは真実でしょう。そう思えば、苦しくないので続けられますし、故障も予防できます。とは言え、最初はがんばらないランニングをしていても、ランニングを続いて行けば、一般人は一般人なりに、速くなりたくなるわけです。そうして、競技者ではなくても、一般人なりのがんばるランニングに陥っていくわけです。そうなると、重力ランニングが必要になります。
著者は、ふくらはぎで蹴るということは否定しています。その代替案として「お尻を使う」と彼が表現する、ハムストリングスで推進する走りを推奨しています。ふくらはぎではなくても、やはり、蹴ることを志向しています。そして、本書の中で「地面から反発をもらう」という言葉が出てきます。この世のあらゆる作用には反作用が存在しますから、地面から反力をもらわずには走れないのですが、地面の反発を意図すること自体が特に一般人にとっては危険です。何故なら「反発」の意味するところは、地面からの押し返しだからです。地面を押せば強く押し返して来る。そう思いながら走ると、筋肉に必要以上の負荷をかけることになります。そして、トレーニングを続ければ、一般人の身体は早晩、故障してしまいます。それが一般人というものです。
地面からの反力は、できるだけピーク値を抑えて、長い時間をかけてもらうのが正解です。そうすることで、脚へのダメージを抑えながら長い距離を走ることができます。ただし、そうは言ってみたところで、現にフルマラソンで2時間半を切っている、イケメンYoutuberが唱えているアドバイスに比較して、全くの実績のない一般人が書いている新理論など誰も信じません。それはわかっているので、私も少しずつレースで(一般人なりの)結果を出していこうと思っています。