「筋肉」よりも「骨」で走れば速くなる! 骨格ランニング

鈴木 清和 著

出典:https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-08-EK-0814488

評価

項目スコア
重力ランニングとの親和性★★★★☆ 4点
理論の完成度★★☆☆☆ 2点
読み物としての面白さ★★★☆☆ 3点

感想・見解

骨格によって最適な走り方が異なるという理論です。これに混じって、走りを滑らかにしましょうという話がなされます。走り方はスイング走法、ツイスト走法、ピストン走法という3つに分類されます。

同時に、筋肉の張力に頼った筋肉走りを否定しています。その解決策として、骨を意識することを提唱しています。筋力は伸長に対する反射の利用を推奨しています。また、上下動を抑えて走ることも目指しています。全体として、目指しているところは、重力ランニングであることは読み取れます。きっと著者は、重力ランニングを体得しておられると予想します。

自分らしく走れば良いというメッセージは、素晴らしいと思います。人によって最適な走り方は異なると打ち出しているのは正しいです。ただし、それは誰しもわかっていることです。誰もが知りたいのは、自分に合った走り方は何かということです。それが明示的に示せなかったとしても、正しい走り方は1つではない、と言われるだけで、固定観念を打ち崩すことができます。今の場所を離れて歩き出すことができるのです。どちらに歩き出すべきかが示されていなくても、止まっているよりはずっと良いです。何故なら、自分の身体に聞けば良いからです。

高橋尚子さんをツイスト走法の模範として示しています。一方で、ツイスト走法は胸を張って走ると書いてあります。高橋尚子さんは両腕を身体の前面に抱え込む様にして走ります。胸を張るというより、やや猫背気味です。また、著者は、女性は内股、男性はガニ股と決めつけています。街を歩いてみれば、ガニ股の女性や、内股の男性はたくさんいます。高橋尚子さんも、ガニ股とは言わないけれども、足を開いて使います。足を後方に送るときに、外旋するタイプです。

このように、明らかな反例があるにも関わらず、それらを無視して論理を構築していることから、理論に信頼性があるのかが怪しく感じられてしまいます。反例が存在しているのであれば、それを理論体系に含めるように努力するべきです。あるいは、少なくともそれら反例が存することについて何らかのコメントをするべきです。

タイプの分け方は基本的に、骨盤より上と下の長さの違いだと書いてあります。脚が短い人はスイング走法、同じくらいの人はツイスト走法、脚が長い人はピストン走法という極めてざっくりとした分け方です。これで本当に分類できるなら簡単ですが、にわかには信じられません。本書では、タイプの違いは、何となく分けているように聞こえます。スイングとツイストとピストンはそれぞれ、走りの中で必ず含まれる動きの要素です。それらのうち、どれが最も強調されていると考えるか、という恣意的な判断が根拠にならざるを得ません。

実際、本書のタイプ分類は発展途中の4スタンス理論です。私の見立てでは、スイングタイプが4スタンス理論におけるB1タイプ、ピストンタイプが4スタンス理論におけるB2タイプです。そして、ツイストタイプに押し込められた、A1タイプとA2タイプを分ければ、4スタンス理論になるのです。現に、「タイプ別 骨にスイッチを入れる方法」において、ツイストタイプは膝を意識し、スイングタイプとピストンタイプでは踵を意識するように書いてあります。つまり、AとBの区別はできているのです。4スタンス理論のすぐ近くまで来ているのです。高橋尚子さんをツイストタイプに分類してしまうところで、違和感を持つべきでした。

批判的なことを書き連ねているようになってしまいましたが、上記の通り、4スタンス理論のすぐ近くまで来ていること、および、重力ランニングと同じ思想でランニングを改善しようとしています。したがって、向かっている方向は本ブログとほぼ一致している訳です。2つの論点を切り分けている意味でも、素晴らしいと思います。他者に伝えるための説明書きの部分が足りないだけなのです。したがって、面と向かって相談に来られた、故障に悩む人のランニングを改善することにも成果を出されているのは、想像に難くないです。

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