眠れなくなるほど面白い図解物理でわかるスポーツの話
望月 修 著
出典:https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784537216202
評価
項目 | スコア |
---|---|
重力ランニングとの親和性 | ★★☆☆☆ 2点 |
理論の完成度 | ★★★☆☆ 3点 |
読み物としての面白さ | ★★★★☆ 4点 |
感想・見解
私が考えているようなことは既に世の中の誰かが出版しているかも知れない、と当然予想しています。そこで、ランニングの物理的解説を含むようなタイトルの本を読み漁りました。その中の1つです。もちろん、まじめにパフォーマンスを向上させるための本ではありません。
重力ランニングに関係があるのは最初の2章だけです。
第1章は100メートル走が題材です。加速度と重力の釣り合いを考慮して、所望の加速度を得るときに、要求される身体の傾きを求めています。物理的には、重力ランニングと同じ現象を指しているのですが、速く走りたいスプリンターにとっては役に立たない情報です。何故ならば、そのときに必要な筋力の大きさと向きが全く議論されていないためです。図を見ると地面に対して水平方向後ろ向きに力をかけるように見えます。しかし、当サイトで示しているように、これは正しくはありません。それでも、重力加速度と走りの加速度を力の釣り合いとして表現しているだけ、ランニングの世界に新しい知見を提供しているというべきなのかも知れません。
第2章はマラソンです。まず、ランニング時の空気抵抗と速度から、身体の傾きを決定します。このときの考え方は、重力ランニングと近いものです。体重を支える力を傾ければ推進力となる、というところまでは来ているのです。しかし、そこからがいけません。体重以上の力を出すと上に飛び跳ねます、と言い切っています。ランニングに関する考察の深さ云々の前に、物理的に間違っています。運動に関する理解が間違っていたとしても物理的な論理立ては正しくあってほしいところです。
身体が垂直であれば体重と同等の力で身体を支えることができ、体重以上の力で上に飛び跳ねます。しかし、傾いているときは体重を支える力では身体を支えることができずに倒れてしまいます。
その後は、人が放物線を描いて走るというモデルにおいて、マラソンを完走するまでの歩数を算出します。そして、その後に上下動を抑えるのが効率的と主張します。しかし、上下動を抑える方法や抑えた場合の効率の良さを検証するもありません。なんとも、何を目的として、マラソンを物理的に解説しようとしたのかわからない内容でした。
しかし、ランニング時の空気抵抗の算出の方法と共に、必要なパラメータを与えてくれたので、そこは大変参考になりました。当ブログでも引用させていただきました。
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