Number Do(ナンバー・ドゥ)オトナRUNの教科書「50歳でも速くなれる」(Sports Graphic Number PLUS)

出典:https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-08-EK-1737592
評価
項目 | スコア |
---|---|
重力ランニングとの親和性 | ★★★☆☆ 3点 |
理論の完成度 | ★★☆☆☆ 2点 |
読み物としての面白さ | ★★★★☆ 4点 |
感想・見解
「RUNの教科書」と題してあるからには、ランニング初心者が知るべきことが網羅されているだろうと思い、購入しました。私はランニング初心者には当たらないと思いますが、世間一般において、どのようなことが初心者に必要だと認識されているのかを知りたかったのです。
副題に「50歳でも速くなれる」とあり、また「RUN」ではなく「オトナRUN」と書かれている点から、明らかに中年層をターゲットにしていることがわかります。Number Doは読者自身がスポーツを実践することに焦点を当てた雑誌であり、「ランニングを始めよう&続けよう!」と書かれていることから、中年の初心者ランナーに向けた内容が網羅されていることを期待するのは妥当です。また、出版社側としてもそのように意図していると判断してよいでしょう。
表紙と巻頭特集
まず、表紙についてですが、Numberの兄弟誌であるため、写真のクオリティは間違いありません。高橋尚子さんがストレッチしている様子が大きく掲載されています。中年世代にとって、2000年のシドニー五輪のマラソンは、ランナーでなくても忘れられない出来事です。巻頭インタビューは当然、高橋尚子さんです。その後、金哲彦さんが還暦を迎えてサブ3に挑戦する様子が続きます。次に、一般ランナー(有名人)がどのようにランニングを生活に取り入れているかの4つの例があります。ここまでは、本誌を購入させるための読み物で、ランニングに興味がある人ならサラッと楽しく読める内容でしょう。自身のランニングに活かせる部分もありますが、初心者向けの教科書のメインコンテンツとは言えません。
本書のコンテンツ
それ以降の内容は以下の通りです。
• 練習メニューの組み立て方
• 筋トレのやり方
• メンタルコントロール法
• シューズの選び方
• ケガの予防法・対処法
• サプリメントの紹介
• 食事の取り方
• エリートランナーインタビュー
• 東京マラソン2024のレポート
• エリートランナーのシューズ経歴
初心者にとって最も必要なのは練習メニューの組み立て方でしょう。筋トレは、ある程度走れるようになってからでも間に合いますし、メンタル面で問題が出てくるのはかなり練習を積んだ後でしょう。シューズについてはアドバイスがあった方が良いと思いますが、実際に初心者向けにシューズをおすすめするというよりは、シューズ製品開発のトレンドを紹介する内容でした。基本的に厚底シューズが並び、私の考えとは異なりました。ケガに関しては、事前に知っておいた方が良いことです。ケガの原因と前兆を理解しておけば、深刻になる前に対処できます。サプリメントや食事については、初心者には不要な情報です。その先はやはり読み物として楽しむ内容が続きます。
ケガと厚底シューズ
興味深いことに、「ケガのメカニズムと対処法」の章の執筆者である医師が厚底シューズを履くことで股関節のケガが増えていると明記しています。その対策として、股関節周辺の筋力をつけることが推奨されています。厚底シューズ以前は膝や足首周辺のケガが多かったそうです。
厚底シューズは、靴底が厚く衝撃を吸収してくれますが、これは本来ふくらはぎが担うべき役割を靴底が担うことを意味します。従来、走り方が悪いとふくらはぎに負担がかかり、それが痛みとなって身体が警告を出す仕組みになっていました。厚底シューズを履くことでその部分がカバーされ、走り方を改善せずに走り続ける結果、上流に当たる股関節に負担がかかってしまうのです。私は、薄底シューズを履き、地面からの衝撃を感じながら走り方を改善することが本来の練習だと考えています。エリートランナーの方々は結果を出さなければならないので、レース本番で厚底シューズを履くのは理解できますが、練習から頼るのは長期的に見るとマイナスに働くと思います。
最終的な感想
結局、走り方についてはほとんど触れられていませんでした。誤った走り方が紹介されるよりはずっと良いと思いますが、ランニングの教科書に走り方が載っていないのは意外でした。私が特に関心を持っているのは走り方であり、それについて一般的にどのように説明されるのかを知りたかったのです。「走り方について触れない」というのが一般的なアプローチであることがわかりました。そして、「限界突破のランニングフォーム」が画期的な本であることが理解できました。