世界が認めた神リカバリー

木谷 将志 著

出典:https://www.kinokuniya.co.jp/f/dsg-01-9784763140975

評価

項目スコア
重力ランニングとの親和性★★★☆☆ 3点
理論の完成度★★★★★ 5点
読み物としての面白さ★★★★★ 5点

感想・見解

本屋に何気なく立ち寄ったときに見つけた本です。ランニングのコーナーではなく、健康のコーナーにありました。

タイトルからしても明らかにランニング本ではありません。しかし、マラソンのトレーニングにおいても、運動→栄養→休養のサイクルを滞りなく回すことは変わりません。本書は、休養のステップに対して、従来の常識以上に促進する技術を紹介しています。

私自身は正直なところ、練習後のケアに関しては、さほど考えていませんでした。栄養を取るようにはしてきましたが、マッサージなどは自分でやるものとは思っていません。

著者は、マッサージに関しては訓練を受けた人ですが、自分なりに改良を続けています。数々のアスリートのケアをする中でより良い方法を見出していきました。吉田選手と共にイギリスに渡り、そこで、日本人以外のプレミアリーグのプレーヤーに専属フィジオを依頼されるほどの信頼を勝ち取ります。

革新的な理論

著者の方法は、いわゆる普通のマッサージとは違います。まず、筋肉のマッサージと聞くと、筋肉の最も太くなっている部分を対象にすると思いがちです。彼の論では、筋肉の両末端付近を圧迫するのが良いそうです。

両末端はその筋肉が細くなっており、全体が集まっています。その結果、最も感覚の鋭い部分なのです。したがって、対象の筋肉の起始部(背骨に近い方の端)と停止部(背骨から遠い方の端)を理解し、抑えることになります。

この時点で、既に私が思っていたマッサージとは違いました。自分の身体を触ってみると、著者の指摘の通り、起始部と停止部においては痛みがはっきりしています。筋肉の太い部分で痛みが感じられるようだと、重い損傷となっており、わかりやすく言えば、オーバーワークなのです。丹念に、起始部または停止部を触ることで痛みがあるか、ないかを判定できるレベルが本来の身体のケアのレベルというわけです。

股関節の痛みと深層筋へのアプローチ

ただ、そんな著者でも、吉田選手の股関節の痛みを完全に治癒させることができないという課題にぶつかります。股関節のことを見つめなおします。すると、股関節の周りには、一般的に知られている大殿筋、ハムストリングスや大腿四頭筋だけでなく、腸腰筋、内転筋などの深層筋があることに気が付きます。

いや、もちろん、知っていないはずはないのですが、深層筋はその名の通り、身体の深いところにあるので、アクセスできないものだと考えていたのです。しかし、実際には、太腿の付け根のライン上の一部から腸腰筋と内転筋にアクセスすることが可能であることを見出しました。

もちろん、そこは、陰部のすぐ脇に当たるので、マッサージの世界でも触らないことになっていたのでしょう。実際に、プレミアリーグの選手からも誤解を受けそうになったと書いてありました。ある意味においては、その施術がこれまで行われなかった明確な理由があるわけで、逆に言えば、その点さえ乗り越えられれば股関節周りの深層筋をほぐす技術を確立したことになるのです。著者は、そこへ踏み込み、成果を上げたことで、認められたわけです。

肩甲骨への応用

著者は、もう一つ肩甲骨にも着目しています。股関節の場合と同じ理論に基づき、肩甲骨周辺の筋肉の起始部または停止部を抑えることで、ほぐしていきます。

起始部または停止部を抑えることで、筋肉がほぐれ回復が早まる、と書きましたが、正確には、ほぐれたところで、縮めることが施術の全体像です。著者の理論に基づいたセルフケアの方法も掲載されています。

一通り内容を理解した後で思うのは、一般人を遥かに超えた高いパフォーマンスのアスリートの身体について議論すると、必ず、股関節(骨盤)と肩甲骨が登場してくる、ということです。簡単に話をまとめる本書の内容は、著者が筋肉のリカバリーという視点から、アスリートのパフォーマンスを最適化していこうとしたときに、股関節と肩甲骨の動きに行きついた、という報告なのです。

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